落下ドライブ - benzo
わたしの叔父はジャズミュージシャンだったのだが
体が弱く、30代の若さでわたしが17歳のとき他界してしまった。
ジャズが好きで、楽器はドラムをやっていたわけだが
他にもハードロックやクラシックやオールディーズやAORやニューウェーヴなど、
ありとあらゆる音楽を彼から教わったものだ。
ちなみに
はじめてもらったCDは
aikoの「花火」と
U2の「WAR」と
Led Zeppelinのなにか(タイトルを忘れた。確かLotta LoveやLemon Songがはいったやつだ。スリーかも)
だった。雑多だな
ぜんぶ今でも好きだ。
そんな叔父の尊敬する友人がやっていたバンドがいる。(解散している)
benzoというバンドだった。
中学高校の当時わたしは「ニューウェーヴ大図鑑」的な、叔父がくれたニューウェーヴバンド総ざらい本みたいのに夢中で、日本の歌ものバンドにはあまり興味がなかった。
バウハウスとかデペッシュ・モードとかデュランデュランとかばっかり聞いていた。
叔父とは親子みたいな友人みたいな、そのどっちでもない妙な距離感で音楽の話をたくさんした。
叔父は、体のこともあるしまあそれこそ才能の話になるが、友のように第一線で活躍できないことや、入退院を繰り返している自分の不甲斐なさをときどきぼそりと口にした。
わたしは聞こえない振りをした。なんとなく悲しかったし。
高校2年の冬、叔父が死んだ。
葬儀やら親戚との挨拶やら嵐のような年始だった。
心ここにあらずとはこのことだと、家族の誰もが思ったはずだ。
誰もがお互いにあまり口をきかなくなった。
叔父が死んで、部屋を整理している際にbenzoのCDが出てきた。
なんとなく叔父の友達であったことを思い出して、うちに帰ってaiwaの水色のぼろぼろコンポにCDを入れた。
そうしたら、これが流れてきた。
叔父はドライブが好きだったことを思い出した。
やけに神経質で常に洗車をしていたことや、車内で聞くビートルズや、ちょっと具合悪くなるくらいきつい香水のかおりやらいろいろ付随的に脳裏に浮かんできた。
叔父の人生は落下ドライブだったかもね、
なんていったら、母や祖父祖母はとっても怒るだろうけれども
この曲を聞いているとそんなに悪くないだろうと思う。
自嘲的に、あーあやっぱ落っこちちゃったな、なんて言ってる叔父の姿を想像する方が楽しかったりするのだ。
わたしこの曲大好きだしね。
いつかこのバンドのメンバーだった方に会ってみたいと今も思う。
そんなことをこないだ叔父の誕生日だったので考えていましたとさ。
にしてもいい曲、ほんとに。
Urara